ヒメツルソバ日記

明るい気持ちになった物事を綴ります

『noma ノーマ、世界を変える料理』を観て②

(①からつづいています)


レネさんの家はマケドニアの農家でした。自然の中を自由に走り回り、どこへでも好きな場所に行ける、すばらしい生活だったといいます。生活が一変したのは、彼の両親が子どもたちを連れてデンマークに移り住んだからでした。60平米の狭いアパート暮らしで、両親は、唯一のぜいたくだったマケドニアに帰省するために、忙しく働き、生活を切り詰めていました。


レネさんの父親はイスラム教徒です。彼らのようなイスラム教徒の移民は、デンマーク社会に貢献しないと思われることが多く、差別的待遇を受けることがあります。レネさん自身、年に何度も体験しました。“バルカン半島に帰れ”。“バルカンの犬め”、いろいろなことを言われたそうです。


そんな経験を持つレネさんが、北欧の文化や雰囲気、気候や人々の特性を生かした料理を作っているのです。ここがデンマークで、今どの季節なのかはっきり認識できて、新たな発見もある料理を日々目指しているというのでした。


“成功はすばらしいことだが、同時に危険でもある”と、レネさんは言います。ノーマが世界ベストレストランの1位に選ばれて以来、人々はいろいろなことを言ってくるようになりました。ガイドブックに載るのだから高級食材を取り入れないと……であるとか、使用する食器や、ウエイターの服装に至るまで。レネさんも、やっと手にした世界的な名声を失いたくなかったので、店を突然高級志向にしたり、スタッフを怒鳴り散らし、ささいなことで大騒ぎをしたのだと振り返っています。


その土地で、その時期にしか味わえないごちそうを作り、すべての客に、最高のもてなしをして楽しませたいだけ。そう気づいたレネさんは、料理に全力を注ぐことだけを考えるようになりました。


(③につづきます)